頭痛の種

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『君の名は。』罪深い映画だ!

いままさに大盛況、社会現象にもなりつつある映画『君の名は。』を見てきました。


客席は、休日の午後に見たこともあってか、館内一の大きさのスクリーンでもほぼ満席状態でした。学生のグループなども目立ち、なんとなく場内も華やいだ雰囲気。

上映が終了したときに、客席のいろんなところなら「やばい...」「すごい...」とどよめきが起こっていたのも印象的でした。


私は新海誠監督のアニメーション映画は不勉強ながら『秒速五センチメートル』しか観ていなかったのですが、それでも俗に言う"新海イズム"的なものを感じることができました。

と、同時に終盤では新海作品なのだから...という予想を裏切るような展開に転がっていき、最期まで息つく暇もなく手に汗握って楽しめました。


ちなみにこの映画正味1時間45分なのに驚きました。もっと長いかと思った...。


  



ここからは私の個人的な感想です。映画の登場人物や展開を踏まえた内容になるので、本編を観てからの閲覧が好ましいです。これから『君の名は。』を楽しみたいと思っている方、ネタバレを避けたい方は注意!

 






さて、『君の名は。』の魅力を語る上で挙がる要素は、光と影や水などの独特の風景描写、音響へのこだわり、少年少女それぞれが交錯するストーリーなど様々あると思います。

その中でも今回は、この作品では「"誰もが感じる"切なさ」を描いているという点について書きたいと思います。


私が思うに、切なさというものは、大切ななにかを失ってしまったために起こる喪失感と、それに起因するやるせなさが入り混じった感情です。

それを踏まえた上でこの映画で描かれる「切なさ」を考えると、少し特殊であることがわかります。


映画の冒頭はこんな台詞で始まります。(間違いがあるかもしれませんが)


   朝目が覚めると何故か泣いている。そういう事が、時々ある。見ていたはずの夢はいつも思い出せない。ただ、何かが消えてしまったという感覚だけが目覚めてからも長く残る。


おそらく、この台詞にほとんどの人が共感を覚えると思います。夢から覚めて、なんだか大切な事を忘れてしまったような気持ちになること、これは誰もが体験することでしょう。


このように、登場人物達は日常の中で喪失感を感じながら、ずっと誰だかわからない"誰か"を探している。つまり、大切ななにかを失った感覚はあるけれど、それがいったいなんなのかがわかっていない、という状態なのです。

これが、映画の中でひときわ強く描かれている「切なさ」です。


この「切なさ」は映画の要所要所でも現れます。


たとえば、主人公の高校生瀧くんが、三葉との入れ替わりが途絶えてからのシーン。

行ったことのない小さな村の景色が気にかかり風景を模写したり、何故だかその村で起きた事故が気になり何度もそれに関する記事を検索して読み漁ってしまう。


もしくは、彗星の引き起こす事故が防がれ、三葉に関する記憶が薄れていった瀧くんの場面。


就職活動を続けていくうえで自分が探しているのは就職先なのか、それとももっと違う何かなのかと悩む。

喫茶店で談笑する客にふと懐かしさを覚える。

歩道橋、交差点、階段、すれ違う人々の中にもしかしたら探し求めている「誰か」がいるのかもと思ってしまう。


先程、こういった感覚のことを、"特殊な"切なさと述べましたが、この感情は決して珍しいものではないと思います。

むしろ私達のような物語の受け手、観客側である、"一般人"こそ「何かが足りない」「何かを探している」と感じてしまうのではないでしょうか。

つまり、冒頭から描かれるこの「切なさ」は誰もが持ちうる普遍的な感情と言えます。



通常ならば、私達が生活の中で感じるであろうこういった感情に、答えは現れません。

しかし、この『君の名は。』ではその当てのない問いに答えが現れます。

距離や時空を超えた少年少女との入れ替わり。それがどんなに現実感のないものであっても、誰もが感じるあの行き場のない切なさが解消され物語が展開していくさまに、私達は心揺さぶられてしまいす。

そしてそして、だからこそ最後のあの再会の瞬間、「出会えてよかった....」と安堵のため息が出るほどにほっとさせられてしまうのです。


擦れ違う場面では本当にやきもきさせられました。『秒速五センチメートル』がトラウマ化している私は正直「終わった...」と思っちゃいました。

同方向に進む電車同士の乗客と目が逢う瞬間も誰もが経験しますよね。本当にあの演出はニクイです。


そしてさらにこの映画の罪深いところは、描かれる物語がほぼ「出会うまで」のお話だということ。

瀧と三葉の出会いはラストシーンのあの瞬間であり、それまではずっと二人は大切なものを探している最中です。

そして最後にあの美しい「出会い」を見せられ、RADWIMPS(今回めちゃくちゃ大切に扱われているという印象がありました。)のエンディングが流れ、ぽんと劇場から出て現実世界に引き戻されると、

もしや....私にもこんな出会いが起こるのかも....?

なんて思わされてしまう。



罪深い!本当に罪深い映画です!


とまあ、こんな具合に共感を得やすい設定や人物描写に美しい絵と音とが味方をして、ブームを呼ぶのも充分に頷けるなあ、と感じました。本当に面白い映画でした。現役で見られる高校生は幸せなんじゃないかなあ。


想像をあらわすのに吹き出しが用いられていたり、胸を触るシーン多かったり、気になる場面も少しありましたがアニメーション映画として成功している作品だと思います。

神木隆之介さんの女声がうまくてびっくりしました。あと個人的に勅使河原役で出演されていたモデルの成田凌さんが溶け込みすぎててまったく気付きませんでした。